最近の北野映画は見る気になれなかったけれど、これは別格ですね。なにしろ、超ひさびさのヤクザものだし(たぶん、2000年の「BROTHER」以来。日本のヤクザものとしては93年の「ソナチネ」以来)。キャストが魅力的すぎるし。予告編の「バカヤロー!」「コノヤロー!」連発が、見る気ををそそりまくるのです。で、見たら。よかった。「全員悪人」というコピーがついてるんですが、まさにその通り。主要なキャラクターも、惜しげもなく殺しちゃう演出が超ドライ。小さな役に見えて結構いい役柄という存在も多いし。最初から最後までが、結構計算されつくしているし。小さなエピソードも細かく後で拾っていくあたりが映画の時間に濃密さを与えているって言うのでしょうか。確かに、残虐でスプラッターとも見まごうようなシーンも多いので、デート映画としては推奨できませんが、東映本格ヤクザ映画、深作欣二的仁義なき戦い、松田優作的ハードボイルド、そして、海外ノワールなんかのファンである男衆にはたまらない作品です(もちろん、女性でもかまいません)。本家の会長から若頭、直参の親分から枝の親分、そして子分までが、けっこう頭悪くて、笑えるといってのか笑えないといってのか…。逆にリアリティあるんじゃないのかとまで思っちゃいます。ちょうど、「憚りながら」を読んだ直後に見たせいもあるでしょうが、ヤクザの親子の絆と金のためのしのぎの軽重やバランスのとり方が各人微妙にずれてるあたりも興味深かったですね。オーソドックスに言えば、「沈まぬ太陽」以降悪役が堂にいっている三浦友和、常にカッコいい椎名桔平、おお!こんな役もやれたんだ!的な加瀬亮の3人が見どころでしょうか。個人的には、おお懐かしい!“チョロ”中野英雄のビミョーな存在感とたけしの後輩(ボクシング部とおぼしい)なのにマルボーの刑事という設定の小日向文世の表裏を手玉にとった演技が面白かったなー。
ところで、「憚りながら」の後藤さんとか、本物のヤクザさんたちには、どんな風に見えるんでしょうかね、この作品。リアルなフィクションに見えるのか、あり得ないけどカッコいいファンタジーなのか、映画でしかありえない作り事なのか…。実話系雑誌の映画評でも見て確かめてみようかな。