ようやく見てきましたが、やはり「第9地区」は面白かった。凄かった。知ってる俳優さんが一人もいなくて、しかも監督は長編初監督なのにこれだものね。SFものには確かにアイデアひとつでとんでもない作品が出来上がることもある訳で、この作品がまさにそのいい例でしょうね。もちろん、「エイリアン」や「アバター」も面白かったし、「スターシップ・トゥルーパーズ」や「第五惑星」もエイリアンと人間というテーマを興味深く描いていたけれど、レベルが違いましたね。ただ人間と宇宙人の共生ってことだけで、強引かつ緻密にこんな物語を撮られるとはね。成功の最大の要因は、舞台を南アフリカに設定するところからスタートしてるからでしょう。アパルトヘイトからようやく脱出しようとしている国を舞台に、白人とアフリカ人のそのまた下に宇宙人というクラスターを設定したことで、非常に奥行きの深い作品に(ある意味とても皮肉な作品に)なってます。主人公の、聞いたこともないような変な訛りの英語をしゃべる情けない小役人ってのもハマッてます。ごく普通の日常の中に蝦ににた宇宙人というのをポンと置いてみただけで、これだけの展開がつくれちゃうんだもんね。はっきり言って、「クローバーフィールド」や「ブレアウイッチプロジェクト」の比じゃありませんな。初めに、蝦に似てる宇宙人を「エビ」と読んで差別感を漂わせるあたりが上手い。銃器やクルマの汚しがリアルだし、何より時代設定を、ほぼ今にしてるあたりが絶妙。この映画の原型ともなったニール・ブロムカンプ監督の「
Alive In Joburg(『ヨハネスブルグで生きる』ってな意味ですね)」はネットで見られる6分の短編です。たかだか6分だから、フェイク・ドキュメンタリー的にごまかしてるのかと思いきや、特撮もモブ・シーンもエイリアンの特殊メイクも相当本気でした。ここまでイメージが固まってれば、劇場用長編に発展させるのも監督の頭の中では簡単だったんだろうな、と納得。グロい描写が多々あるので、そっち系が嫌いな人にはオススメしませんが、SFとしては今年今のところベスト・ワンでしょう。