「ボラット」を見た人なら分かる、あのサシャ・バロン・コーエンの映画です。「ボラット」は残念ながらDVDで見たので、「ブルーノ」はなんとしても、と映画館に行ってきました。ヴァルト9でも小さめのシアター7。観客は4分の入り。でも、よく分かってるひとばかりであちこちで笑いがハジケてました。サシャ演じる、オーストリア出身のゲイのファッション・レポーター・ブルーノが主人公。手法も「ボラット」のあのやり方です。いわゆる「どっきりカメラ」方式というのかな。サシャが演じているとか、コメディ映画のロケということを隠して、本当のオーストラリア人が取材やインタビューをするという設定で、現実の人々を撮影しておちょくる、という奴。なにしろ、おちょくる相手が凄すぎるんですよ。有名人では、ポーラ・アブドゥルや元大統領候補のロン・ポール下院議員をいじり、中東では元モサド長官や元パレスチナ議長をからかい、レバノンに乗り込んで実在するアルカイダのテロリストに誘拐をお願いする始末。アメリカでは、アフリカで養子にした黒人の赤ちゃんの父として、リアリティTV番組に出演。観客の黒人たちの大ブーイングを受けちゃいます。さらに、レッドネックが大多数である・アーカンソー州ではプロレス番組収録と偽って、金網リングの中で男同士のラブシーンを見せちゃうんですよ。ホモ大嫌いな白人男性は目に涙を浮かべてましたよ。下品だし、汚いし、醜いし、お洒落じゃなくて、倫理にももとるし、気分が悪くなるところも多々ある。と言って、政治的や宗教的に主張があっての反体制としての笑いでもない。とにかく、すべてのものが笑いの対象になってるんですよ。それは、ある時はファッション業界だったり、ある時はゲイだったり、思想的対立だったり、宗教的立場だったり、人種への偏見だったりする。まさに、笑いの無差別攻撃で面白ければイイ。だけど、見終わるとなんだか考えさせられちゃうんですよね。不思議な映画だなー。サシャ・バロン・コーエンて、現存する最大のトリックスターなのかもしれませんね。あ、原案・脚本などはすべてサシャ・バロン・コーエンですが、映画の監督は「ボラット」同様、ラリー・チャールズ監督です。
ところでネタバレになっちゃうんだけど、この映画のエンディング・ロールが凄いんです。白い服来たサシャが出てきて歌う歌が「DOVE OF PIECE 平和の鳩」ってタイトル。真面目に終わるんか、と思っていると、サイド・ボーカルがU2のボノなんです! 「え!え!え!」と思ってる間もなく反対側にもう一人のサイド・ボーカル、スティング! 「信じられない」という暇もなく、リード・ギターが、ガンズのスラッシュ。さらにラッパー、スヌープ・ドッグ。そして、あろうことかピアノは、エルトン・ジョン。ダメ押しで、サイド・ボーカルに、コールドプレイのクリス・マーティン! 一体全体、どういう交渉でこのバンドが成立したのか、知りたいもんですよ。みたい方は、
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