インディーズ系邦画なんですが、ゆうばりファンタスティック映画祭でグランプリをとって注目されたんですね。初公開はちょうど1年前くらい。でもなにしろ、単館上映とかあちこちでポツンポツンと公開とかが多いんで、なかなか見れませんでした。噂は聞いてたんだけどね。で。東京での3度目のリバイバル上映を下高井戸シネマで見てきました。とにかく、埼玉のラッパーの話なんだろう、くらいしか事前に知識もなく見たんですが。役者さんたちが、うまいというのか素人っぽいというのか、まさに埼玉でラッパーやってるフリーターにしか見えないんですよ。一瞬、「これってドキュメンタリーじゃないよね」って思ったし。マジで。見てると段々分かってきましたが。これが脚本のあるフィクションだってこと。それにしても、出てくる役者さんたちの素人っぽさは尋常じゃないっスよ。それがイイんだけど。やっぱ演技がうまいと評価するべきだろうな。主役のIKKU役は、駒木根隆介さんていう役者さんですが、まさに太った(失礼!)ニートのラッパーって感じ。相方のTOM役は水澤紳吾さんて方。しかも、みんなソコソコのレベルでラップもうまいんで、実在のラッパーをキャスティングしたのかと思ったほどです。でまあ、埼玉の深谷市をモデルにした(入江監督の出身地だそうです)福谷という地方都市が舞台で。きちんとした仕事もしないでアルバイトや家業の手伝いをしながら、ラップ・グループ「SHO-GUNG(ショーグン)」を組んでる若者たち。実際にライブをする訳でもなく、ただ工場跡に屯しているだけの日々に起きる出来事を描いています。と言っても、友情がある訳でも、努力がある訳でも、勝利がある訳でもないし。ましてや、恋なんざあるはずもない、って脚本が甘悲しくってナイスですぜ。脚本・監督は入江悠さん。ワンシーン・ワンカットを基本にした絵づくり(しかもカットエンドはブラックアウトが多い)は、ちょっと単調だけれど、埼玉な(というか田舎な)雰囲気と行き詰まった感を醸しだすのにはよかったかも。16ミリなのでしょうか、映像はクリアではなく、気持ちアンバー(時々グレイ)がかったような調子で、それも田舎っぽさにピッタシでした。都会に出れず、でも地元にも足場がなく、夢に生きたいのに夢らしい夢も見つからない。いかにも、今のローカルの若いヤツらの気持ちを上手に掬いとったような空気感に好感が持てる映画でした。絶対に! とおすすめするつもりもないですが機会があれば見て欲しい。そんな雰囲気の青春映画ですよ。
上映終了後、映画館のロビーに出たら出口のところに、主演のお二人が立っていてビックリ! まあ、そう売れてる役者さんじゃないでしょうが、こういうリバイバル上映にも顔を出してらっしゃるのに超好感持ちましたよ。観客が取り囲んで、お話したり、パンフにサインしたりしてましたよ。駒木根隆介さんは「赤堤ビンケ」という劇団の役者さん。水澤紳吾さんは、仙台育英野球部出身の役者さんだそうです。応援したくなりますね。