実は、ポン・ジュノ初体験。「殺人の追憶」見てませんでした。もちろん、「グエムル」だって未見。あまりにも絶賛する向きが多いので、フラフラッと映画館へ。で、「母なる証明」を見たんです。いや、圧倒されたの一言。ウォンビンの復帰第1作ということで話題なんだと思うけど(実際映画館のお客、半分は中年女性でした)、この映画のパワーは明らかに監督の力ですな。「オールド・ボーイ」や「チェイサー」を見た時に似た感覚ではあるんだけど、さらにさらに深さを感じさせてくれる映画だったのです。この作品。韓国の田舎の村で起きた女子高校生殺人事件をめぐるお話です。主人公である母親は、脳に障害を持つ息子と二人暮し。貧しいけれど、闇の朝鮮人参商売や、無免許での鍼治療などで食い繋いでいます。そこに、女子高生殺しの犯人として息子が逮捕されてしまうんですね。当夜の記憶さえはっきりしない息子は、警察の作った自供調書に拇印を押してしまいます。そこから、母親の真犯人探しが始まったのです…。と、こう書くと冤罪もので母子もの、涙のヒューマン・サスペンスみたいですけど。これが、まったく違う訳なんです。ある意味、「藪の中」的。どんでんがえしの繰り返し。冒頭からのすべてのショットに理由があるんだなぁ。蜘蛛の糸のように張り巡らされた緻密な伏線の数々。スルーしてしましそうな小さなエピソードが、後で大きく効いてきます。些細な小道具にも、思わぬ意味がこめられてます。一瞬の見逃しが、命取りになっちゃうような、そんな映画。これだけエネルギーを込めてつくられた映画も珍しいのではないでしょうか。そして、映像。オープニングとエンディング。ロングショットとアップショット。計算されつくした映像設計。いや、ポン・ジュノ、凄いっすねー。
で、思わずTSUTAYAに行って、「殺人の追憶」と「グエムル」と「ほえる犬は噛まない」のDVDを借りてきたんですけど。もうすぐ、見終わるので、そっちの感想もまた書きますね。