「消えたマンガ家」や「ポパイの時代」などカルチャーの裏側にスポットを当てた企画ものでは定評のある太田出版からまた面白い本が出た。安藤健二著「封印作品の謎」である。円谷プロの「ウルトラ」シリーズ第3弾である「ウルトラセブン」に封印されたエピソードがあるというのだ。特撮マニアには周知の事実らしいのだが、その話は12話の「遊星より愛をこめて」。著者は元産経新聞記者のフリーライターだが、まだ20代前半の若さである。この人、神戸市須磨区の事件で少年が逮捕された時、少年の顔写真が報道されないことに憤りを感じて独自にインターネットサイトを立ち上げた人だそう。早熟な高校生だったのだな。さて、封印されたエピソードだが、取り上げた怪獣の設定に端を発していたようで(これ以上はネタばれになるので書かないが)やはり差別関係の抗議が原因らしい。この本これ以外にも封印されたドラマやマンガ、ゲームなどを10本ほど紹介している。著者のスタンスはあくまで自分で関係者にインタビューして封印の事実と原因を解明することのようで、なかなか骨太なものを感じる。封印された作品というのは、世の中にはたくさんあって、民放テレビ局のドラマでも常盤貴子のシャワーシーンのあるものが再放送されていないなんてのは有名である(「悪魔のキス」)。もっと悲惨なのは、ビデオ制作初期の番組で、ビデオテープ使いまわしのために消されているというのだ。僕もリアルタイムで見て感動したNHKの「黄色い涙」は、永島慎二のマンガ「漫画家残酷物語」のドラマ化なのだが、これが現在まったく残っていないそうである。これはもう封印というより封殺だよなー。